眼鏡(めがね、がんきょう)



眼鏡(めがね、がんきょう)とは、目の屈折異常を補正したり、目を保護したり、着飾るための器具。




眼鏡の発明
眼鏡の発明者や発明の年代ははっきりとしないが、1306年2月23日水曜日朝にサンタ・マリア・ノヴェーラのフィレンツェ教会において行われた説教の中で、修道士フラ・ジョルダーノ・ディ・リヴァルトが眼鏡について触れ 「この20年以内の発明である」「発明者と話をしたことがある」と述べていることから、遅くとも13世紀末のイタリアでは製作されていたことが分かる。当初の眼鏡はもっぱら老眼の矯正に用いられた。

中世において眼鏡は知識と教養の象徴であり、聖人の肖像には、たとえ眼鏡発明以前の人物であっても、眼鏡がしばしば描き入れられた。



眼鏡の構成

眼鏡の各部の名称眼鏡とは、英語でa pair of glasses(一組のガラス)と呼ばれるように、本質的には眼前に置かれた2枚のレンズであり、レンズを支えるフレーム、テンブルなど以下の部品から構成される。

フレーム
テンプル+モダン
ブリッジ
智・蝶番
パッド+クリングス


眼鏡の効用
眼鏡は視力を矯正する目的のほかに、眼球を保護するという重要な役割がある。



レンズ
眼科での度数検査に用いる物などを除き、通常の眼鏡には凸レンズでも凹レンズでもメニスカスレンズが用いられる。これはレンズの外面(眼球から遠い面)も内面(眼球に近い面)も眼球側から見たときに凹面になっているもので、目と顔のカーブに対して不自然にならないようにするためである。



屈折作用による分類
眼の屈折異常によって異なる種類のレンズが使われる。


近視
凹レンズ



遠視
凸レンズ



乱視
トロイダルレンズ(近視や遠視を全く含まない乱視の場合は円柱レンズとなる)

近視あるいは遠視の人の多くは乱視を併発している。近視や遠視で眼鏡を作成する場合は、軽い乱視でも「ついでに」矯正する場合が多い。ただし、軽い乱視ならば矯正しないほうが眼鏡に慣れやすくてよいとする意見もある。



老眼
凸レンズ

老眼は眼の調節機能が加齢とともに弱り、水晶体を膨らませて近点に合わせることが困難となった場合に起こる。遠視とは屈折異常のメカニズムはまったく異なるものの、遠視用と同じ凸レンズで補える。



遠近両用
累進レンズ

1枚のレンズ上で、遠く・近くを矯正できる。累進帯と呼ばれる度数の変化する場所が存在し、境目のないレンズとして年齢を気にする中高年が使用する。

老眼になった場合の矯正レンズの種類は、もともとの目の状態によって以下のようになる。

もともとは正視 - 上部は度数0で下部が凸レンズ
もともとは遠視 - 上部が弱い凸レンズ、下部が強い凸レンズ
もともとは弱い近視 - 上部が弱い凹レンズ、下部が度数0または弱い凸レンズ
もともとは強い近視 - 上部が強い凹レンズ、下部が弱い凹レンズ


面形状による分類


球面レンズ
表面・裏面とも球体の一部を切り取った曲面に研磨されたレンズを球面レンズという。

縦方向と横方向とで度数を変えて乱視矯正を含めたものは面形状が球面ではなく、正確な光学上の分類では球面レンズではない。しかし眼鏡レンズでは慣習として、球面レンズと同じラインアップ上の製品であれば「球面レンズ」と呼んでいる。



非球面レンズ
非球面レンズでは片面または両面を意図的に球面でなくして設計してある。そのため断面を見ると外周と内周とでカーブのきつさ(曲率)がなだらかに変化している。

球面でなくする意図には次のようなものがある。

周辺部の歪みを低減する。
球面レンズではレンズの周辺部で度数が強くなっていたのを、周辺部まで一定の度数にする。
多少なりとも薄くする。
ただし、球面レンズに慣れた人には、周辺部の歪みが少ないことが逆に不自然に感じられたり、周辺部まで度数が一定であることが「周辺部の度数が弱い」と感じられたりすることもある。

さらに細かく分類すればレンズの外面のみを非球面にした外面非球面と、内面を非球面にした内面非球面、両面を非球面にした両面非球面とがある。

防汚コート
レンズに汚れをつきにくくしたり、付いた汚れを拭き取りやすくする。
紫外線カットコート
ガラスでもプラスチックでも素材自体に紫外線を通しにくい性質があり、紫外線をカットしないレンズを作るほうが難しいが、さらに完全にカットするためのコーティングが施されることがある。
防曇コート
付属の液体を定期的につけることでレンズの曇りを防ぐ。
衝撃吸収コート(インパクトコート)
レンズに衝撃がかかった時、このコーティングでより強度を上げることができる。縁なしやナイロールフレームに有用であるとされる。


偏光レンズ
釣りやスキーの時には視界の確保や目の保護のため、水面や雪面からの表面反射光をカットする偏光レンズが用いられる。



フレーム
眼鏡のレンズを眼前に固定するための枠をフレームという。



フレームの種類


構造による分類

鼻眼鏡の例。人物はヴァルター・ネルンスト。つる付き眼鏡
鼻当てとテンプルによって支える、もっとも一般的な形式。
一山
テンプルはあるが鼻当てがなくブリッジが直接鼻に当たって眼鏡を支えるもの。
柄付眼鏡
柄を手で持って使用するもの。現代では一般的でない。
鼻眼鏡
テンプルがなく、鼻をバネで挟むような形で装用するもの。現代では一般的でない。鼻の低い人には適さない。フィンチとも。
片眼鏡
片方の眼窩にレンズをはめ込むようにして使うもの。現在では一般的でない。モノクルとも。


リムの形状による分類

フルリムメガネの例。人物は金正日朝鮮労働党総書記
縁無しメガネの例。人物はラムズフェルド元アメリカ合衆国国防長官フルリム
金属製の縁でレンズの全周を覆ったもの。
縁無し
リムレス、ツーポイントとも。レンズの外周を覆う縁のないもの。破損しやすいが、軽く、顔の印象をあまり変えない。
ナイロール
ハーフリムとも。レンズの上半分のみを金属製の縁で覆い、下半分はナイロン糸などで固定したものである。
逆ナイロール
アンダーリムとも。ナイロールとは逆に、レンズの下半分のみを金属製の枠で覆ったものである。


テンプルの形状による分類
半掛け
一般的な形状。平仮名のへの字状になっている。
縄手
巻きつる、ケーブルテンプル、スポーツフレームとも。別名のとおりテンプルが、耳たぶのまわりをぐるりと巻きつくように作られたもの。もともとは眼鏡の必要な人が、乗馬中に眼鏡を落とすことがないよう開発されたものだが、最近は眼鏡の常用が必要な子どもが、激しい遊戯の最中に落とすことがないよう使用される場合が多い。中度以下の近視は、見えれば掛けなくてもいいが、遠視の子どもは正常な視力の発育のために眼鏡を常用することが多く、縄手フレームが使用されるのが普通である。眼鏡は衝撃が加わったとき外れることによりショックを吸収できるとする考えから、遊戯中の事故などの際に外れないと衝撃が耳や鼻に直接加わり怪我を負いやすくなるとして縄手フレームの使用に否定的な見解もある。ボールなどが当たった場合広い面積に圧力が加わることになるが、逆に繩手の蔓のメガネを掛けていた場合、狭い面積に力が集中し、特に蝶形骨を痛めた場合視神経を痛め、最悪の場合失明にいたる場合があると報告されている。
長手


素材による分類
メタルフレーム 
金属製のフレーム。
セルフレーム
かつてセルロイドで作られたことからこのように呼ばれるが、近年ではアセテート製のものが殆どである。顔の印象を大きく変えるファッション性が魅力だが、掛け心地の調整の余地が少ないのが欠点である。
金無垢
メタルフレームのうち、材質に金を使ったものをいう。純金では柔らかすぎるので18金や14金が使われる。表記は18K、14K。柔軟性がある、腐食しにくい、金属アレルギーを起こしにくい、などの長所がある一方、貴金属だけあって高価である。
チタンフレーム
チタン素材で作られたフレーム。腐食が起こりにくく丈夫で軽いことから、シニア向けフレームに用いられることが多くなった。表記はTi-PまたはTi-C。なお、-Pは純チタン、-Cはクラットチタン。後者はメタルフレームを芯にしてその外側にチタンを巻きつけてあるため、汗などでメッキ剥がれがあった際に同時に剥がれる恐れがある。
銀縁
メタルフレームのうち、銀で作られたもの。銀は眼鏡フレームには適さないので商品としてはあまり流通していない。銀色のメタルフレームをいうこともあるが、眼鏡店の店頭では誤解を避けるためこの意味では使われず、俗称である。
鼈甲縁
鼈甲で作られたフレーム。現在ではワシントン条約により輸入が禁止されているため非常に高価である(象牙同様、規制施行前に輸入された材料で作った製品しかない)。化学合成で作られた鼈甲風のセルフレームをいうこともあるが、眼鏡店の店頭でこの意味で使われないのは「銀縁」と同じである。


レンズの形状による分類

ロイド型の代表格・ロイド眼鏡。メガネをかけている人物は、形の名の由来にもなっているアメリカの喜劇役者ハロルド・ロイド。丸目
丸いもの。ただし真円では眼の錯覚で縦長の楕円に見えるので通常は若干横長になっている。ロイド型とも。
オーバル
楕円。
ボストン型
逆おむすび型。
ウェリントン型
逆台形。
フォックス型
つり目。「教育ママ」のカリカチュアに描かれるような型。
カニ目
天地(上下の高さ)の極端に浅いもの。
オクタゴン
八角形。
茄子型
ティアドロップとも。一般に言う「レイバンのサングラス」型。マッカーサー元帥がかけていたタイプ。


フレームサイズ
眼鏡の大きさは『50□18-135』という形で表記されることが多い。この場合、レンズ横幅50mm、鼻幅(山幅)18mm、つる長さ(テンプルをまっすぐ伸ばした長さ)135mmを表記している。この表記法は□マークからボクシング・システムと呼ばれる。

消費者が注意すべき点は、たとえ同表記であっても、デザインによって横幅寸法などはまるで違うため、あくまで目安の一つで、実際に試着装用してみたり専門家による調整が必要であるという点である。(表記には総寸法の提示が無く、ちょう番部などがレンズから横に張り出したデザインやテンプルの曲げられてからのサイズはわからないため)



装身具としての眼鏡
眼鏡は装身具としての側面も持っている。顔面の中でも目立つ場所である目の周りに装着する眼鏡の装身具としての可能性は高い。しかも、視力矯正という実用品の側面も併せ持つので、純粋な装身具であるピアスなどと違って装用しないように求められることが殆ど無い。

上記のように眼鏡のフレームには多種多様なものがあるが、実用品としてみればサイズ違いだけで十分である。壊れやすい縁無しなどは実用品としての性能は劣っているともいえる。多種多様なフレームが開発されてきたのは眼鏡が昔から装身具としての側面をもっていたことの証左である。

視力に問題がなくても装身目的で眼鏡を装用する者もいる。装身目的専用で視力矯正作用を持たない眼鏡を伊達眼鏡という。特にまぶしいわけでもないのにサングラスを用いるのも装身目的といえる。サングラスを掛けると眼球に入る光量が減るので、眩しさが減り瞳孔が開くことになる。UVカット性能が適切なレベルでない製品は紫外線をよけいに眼球に浴びてしまい、却って目を傷めることになるので注意が必要である。

レンズの改良においても外観の改善つまり厚みの低減には大きな努力が払われてきた。高価な高屈折レンズも、利点は外観の良さが主であり、光学性能ではむしろ劣ってさえいる。

一方で、眼鏡のイメージは様々である。マイナスイメージを抱く者もいる。曰くガリ勉イメージなどである。逆に東京ヤクルトスワローズ監督兼捕手の古田敦也は、ドラフト指名の際、阪神タイガースが眼鏡をかけたキャッチャーは不要として指名しなかったが、ヤクルト入団以来の選手として、また日本プロ野球選手会での活躍により、眼鏡をかけていることにより知的なイメージで捉えられ、眼鏡メーカーがスポンサーについていることも事実である(イワキの「アイメトリックス」を使用)。また一部では、「メガネ男子」及び「眼鏡っ娘」が流行しつつある。日本人は一般にサングラスを掛けると柄が悪く感じられる。 日本では眼鏡を着用した二枚目スターがいないこと(目が悪ければコンタクトレンズを装用する)を考えれば、あまり印象はよくないほうである。前述の「メガネ男子」「眼鏡ッ娘」が殊更に取り上げられるのはその反動といえよう。一方、韓国では男性に知性を求める傾向があるため、二枚目スターも眼鏡をかける。



治療用眼鏡等の保険適用
2006年4月より乳幼児の弱視や先天性白内障手術後の治療用眼鏡(コンタクトレンズも含む)に対して健康保険の療養費が支給(保険適用)されるようになった。詳しくは弱視の項目を参照のこと。



検眼
眼鏡の度数を測定する行為を検眼という。眼科医では処方行為となり、処方箋を発行する。 眼鏡店での検眼は、ユーザーの度数選択の補助となる。海外ではオプトメトリスト[1]のような公的資格を設けて眼科医と区別し処方をしている国は 多い。日本では公的資格は整備されていないが民間資格はある。ただし欧米のオプトメトリストのような 業務独占はされていない。

※眼鏡店での検眼従事者は医行為が出来ないので、診断・治療・処方箋発行は範囲外となる。  また薬剤を投与して行う検眼も範囲外となる。





<<昭和29年11月04日 医収第426号>>

眼鏡店において、非医師が、検眼機を使用して検眼を行う場合及びその検眼に関する広告を 行う場合にあっては、それぞれ医師法第十七条又は医療法第六十九条違反を構成するものと解せられる。

なお、検眼について非医師の行い得る範囲は、眼鏡の需要者が自己の眼に適当な眼鏡を 選択する場合の補助等人体に害を及ぼすおそれが殆んどない程度に止るべきであり、 通常の検眼器等を用いて度数の測定を行うが如きは、許されないものと思料する。




以上の「厚生省医務局長回答」によると、眼鏡店における検眼の定義は、その行為そのものが 人体に害を及ぼさない程度であるべきで、その目的は客が新たに装用するレンズ度数を新規に選択する 場合の補助であることが分かる=現代でも眼鏡店で通常行っている業務の一つである。 またこの回答は眼鏡店での検眼を定義した上で、それを全面的に否定するものではなく、 行い得る範囲を示している。

なおここでいう検眼機とは昭和29年当時のトンネル式検眼機等を指している。


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